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  2. 分裂拍シゾリスモスと孤立拍ソリリスモス
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On this page

  • 最初の拍が強拍弱拍かを判断する感覚は言語リズムの影響を受ける
  • 頭子音構成軸Onset Structuring Axisとは
  • 言語リズム投影理論LRPT=Linguistic Rhythm Projection Theoryとは
  • 能動的事前予期裁ち割り主義PD=プロアクティヴ・ディヴィジョニズムと受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズム
  • 分裂拍Schizorhythmosと孤立拍Solirhythmos
  • 日本的追従律動タテノリについて
  1. 超グルーヴハイパーグルーヴ理論
  2. 分裂拍シゾリスモスと孤立拍ソリリスモス

分裂拍シゾリスモスと孤立拍ソリリスモス

最初の拍が強拍弱拍かを判断する感覚は言語リズムの影響を受ける

音楽には必ず、弱拍と強拍があります ─── 最初に聴こえた拍は、弱拍なのか強拍なのか。その拍を聴いた瞬間、拍が1種類しかないならば、その拍の解釈も1種類しか存在しえません。しかし拍が弱拍と強拍の2種類あるならば、その解釈も2種類存在することになります。その拍の解釈次第で、全く同じ拍の並びに対して、全く異なる解釈が同時に成立することになります。 全く同じ拍の並びに対して、全く異なる譜面表記方法が考えられるということです。

最初に聴こえた拍は、弱拍なのか強拍なのか。その拍の強弱をどの様に判定すべきなのか ─── これは音楽を解釈する上でのとても基本的な要素と言えます。 そしてこの強弱拍の判断方法は、その人が母語として話す言語リズムに影響を受けます。

  • シラブル拍言語
    • 最初の拍を8分音符の弱拍と認識する傾向がある
  • ストレス拍言語
    • 最初の拍を8分音符の弱拍、或いは4分音符弱拍に先行する8分音符弱拍と認識する。
  • モーラ拍言語
    • 最初の拍を必ず1拍目の強拍と認識する。

この問題について以下の事柄を説明します。

  • 観察方法
  • 観察結果の分析に必要な理論
  • 観察結果の分析の方法
  • 観察から得られた仮説

頭子音構成軸Onset Structuring Axisとは

これまでシラブル拍・ストレス拍・モーラ拍と順番に言語リズムの特徴について見てきました。強拍弱拍の順序には言語によって違いがあります。音節核と頭子音の位置関係が強拍弱拍の順序の向きがあります。このことをここでは 頭子音構成軸Onset Structuring Axis と呼びます。

  • シラブル拍リズム言語 (拍の順番→ 弱強)
    • 母音を等間隔に発音する。
    • 頭子音最大化原則MOP = Maximal Onset Principle

      • 末子音は出来るだけ頭子音としてまとめて発音する。
  • ストレス拍リズム言語 (拍の順番→ 弱強)
    • シラブル拍リズム言語の全ルールを踏襲しルール追加する。
    • アクセントのある母音を等間隔に発音する。
    • アクセントのない母音と子音を縮小してアクセントのある母音の等間隔性を守る。
    • 頭音節最大化原則 (MPOP=Maximal Prosodic Onset Principle)
      • 末音節は頭音節にできるだけまとめて発音する。
  • モーラ拍言語 (拍の順番→ 強弱、又は強強… )
    • 母音ないしは子音が等間隔に並んでいる。
    • 頭子音最小化原則 (MiOP = Minimum Onset Principle)
      • 末子音、及び多重子音は、前シラブルの後方に追従するように新たにシラブルを作成し、それぞれの子音をばらしてから発音する。

この様に、言語によって、頭子音をまとめる位置を決める方向の違いがあります。これが頭子音構成軸Onset Structuring Axisです。

言語リズム投影理論LRPT=Linguistic Rhythm Projection Theoryとは

頭子音構成軸Onset Structuring Axisは音楽の強拍弱拍の順序を決めます。 このことをここでは 言語リズム投影理論LRPT=Linguistic Rhythm Projection Theory と呼びます。

再帰的韻律同一性原理RPEP=Recursive Prosodic Equivalence Principle によって、頭子音構成軸Onset Structuring Axis も再帰的に適用が出来るという仮説によって、言語を超えて音楽のリズムにもOSAを適用したものが 韻律的頭音節最大化原則MMOP = Maximal Metric Onset Principle 及び 韻律的頭音節最小化原則MiMOP = Minimum Metric Onset Principle です。

そして言語と音楽だけでなく、更に歩き方やスポーツ格闘などその他の行動原理にも反映させたものをここでは 能動的事前予期裁ち割り主義PD=プロアクティヴ・ディヴィジョニズム ( PD=Proactive Divisionism ) 受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズム ( RA=Reactive Appendism ) と呼びます。

  • シラブル拍/ストレス拍の頭子音最大化原則MOP = Maximal Onset Principle、及びストレス拍の 頭音節最大化原則MPOP = Maximal Prosodic Onset Principle
    • → 弱強リズム認識が音楽にも適用される
      • → 韻律的頭音節最大化原則MMOP = Maximal Metric Onset Principle
        • → 能動的事前予期裁ち割り主義PD=プロアクティヴ・ディヴィジョニズム
  • モーラ拍の 頭子音最小化原則MiOP = Minimum Onset Principle
    • → 強弱リズム認識が音楽にも適用される
      • → 韻律的頭音節最小化原則MiMOP = Minimum Metric Onset Principle
        • → 受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズム

能動的事前予期裁ち割り主義PD=プロアクティヴ・ディヴィジョニズムと受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズム

核 Nucleus と 頭子音 Onset の位置関係 ── これこそが日本語と他言語との根本的な違いです。 言語における核 Nucleus は、音楽における強拍のような役割を果たします。 各言語が聴覚上で核(Nucleus)の前に頭子音(Onset)を配置しているか、あるいは後に配置しているかという認知上の傾向の違いが、音楽におけるリズム認識 ── すなわち、強拍の前に弱拍を置くか、後に置くか ── というリズム順序の違いへと反映されるのです。この強拍弱拍の順番認識が言語発音構造上の拍リズム認識と相関関係があるという仮説を、ここでは律動リズム的頭子音最大化原則(RMOP = Rhythmic Maximal Onset Principle ) と呼びます。

核(Nucleus) は、音楽で言うところの強拍の様なものです。

シラブル拍・ストレス拍では音節核と同時に母音を発音します。つまり母音が強拍の様なものです。そして子音は弱拍の様なものです。そして、子音は母音の前後にあります。しかし頭子音最大化原則(MOP=Maximize Onset Principle) によって末子音は全て頭子音にまとめられます。つまり子音は必ず母音の前に配置されます。ここからシラブル拍・ストレス拍は、弱拍を先にくるものとして認識し、強拍を弱拍の後ろとして認識しているのです。

モーラ拍では、音節核と同時に子音を発音します。つまり子音自体が強拍の様なものになります。そして子音が極度に短く、母音を子音の直後に発音します。子音がない場合は、母音を音節核と同時に発音します。 そしてモーラ拍には末子音がなく頭子音最大化原則(MOP=Maximize Onset Principle)を持ちません。その代わりに頭子音最小化原則=MiOP によって全ての子音・末子音をバラバラにしたうえでそれぞれに新たにシラブルを作成し、どんどん後方に追従するように追加して、シラブル数がどんどんと後方に伸びていきます。 つまりモーラ拍には強拍しかありません。全ては後方へと伸びていく強拍の連続なのです。 弱拍を持たないために、後ろに続く強拍と弱拍の区別がつきません。

これが弱拍を持つシラブル拍・ストレス拍との大きな違いです。

弱拍が強拍の前にあると認識することの本質は、強拍の位置の予想です。 手を叩く時に、そこにまだない強拍の存在を仮定してその位置を予想しているからこそ、自分の叩く弱拍が強拍よりも前に聴こえるのです。

弱拍の後に続くまだない強拍の位置を予想する為には、現在のテンポがどの程度なのかを予想する必要があります。そしてそれだけでなく次の音符の音価が何なのか…八分音符なのか四分音符なのか二分音符なのか…全てを前もって予想している必要があります。予想であるからこそ、外れることがあります。外れた場合には修正も必要となります。こうして演奏中に強拍の位置を修正しながら弱拍を演奏し続けるという行為を恒常的に行い続ける必要があります。

弱拍が強拍よりも後ろにあると認識することの本質は、受動的な追従です。次に起こる未来のまだ起きていない拍の位置を予想するのではなく、既に起こった既に存在する拍に対して反応しながら行動する受動的に追従して弱拍の位置を決めているため、既に存在する強拍の後ろに弱拍があると感じるのです。

強拍が聞こえてから行動を起こし、強拍が聞こえてから一定時間待って手を動かす。強拍が聞こえてから一定時間待って、次の強拍を演奏する。 ─── 全ての行動が何らかのトリガを聞いてから追従して開始するという原理に基づいているのです。

これは日本人が時間を分割するという感覚を持っていないことを隠喩しています ─── このことは観察によって簡単に証明することができます。その方法は、 二人でペアになって、交互に手を叩くことです。しばらくやってみるとわかりますが、日本人は交互のタイミングを維持することが出来ず同時に収束してしまいます。これは日本人以外の人にはとても容易いことですが、日本人だけが交互手叩きを行うことが出来ないのです。

この追従の感覚は、分割にはなり得ません。何故ならば、次の拍を予想している人は、未来の拍の位置を知って、過去の拍の位置を知っている為に、中間地点を決定することが出来るからです。追従の感覚で弱拍を認識すると、過去の拍の位置だけを知っており、未来の拍の位置を知らないため、中間地点を決定することが出来ません。

ストレス拍・シラブル拍の分割のあるリズム概念をここでは 能動的事前予期裁ち割り主義PD=プロアクティヴ・ディヴィジョニズム(Proactive Divisionism) と呼びます。またモーラ拍の分割のないリズム概念をここでは受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズム (Reactive Appendism) と呼びます。

分裂拍Schizorhythmosと孤立拍Solirhythmos

強拍と弱拍が存在する為には必ず2拍が必要になります。そこに1拍しかなければ、それは強拍にも弱拍にもなりません。強拍がそこにありそれを分割する拍が表れて初めてそれは強拍と弱拍になります。強拍と弱拍は、ストレス拍リズム・シラブル拍リズムの発音構造自体が持っているリズム構造の本質です。 このリズムは必ず2拍が対になって演奏されるのは、シラブルは必ず頭子音を持っており、母音を持っており、末子音を頭子音につなげて必ず頭子音・母音の順番で二拍に分けて発音するという習慣から来ています。

二手に分かれて交互に手を叩きあうパターンが特徴的な演奏ですが、この交互に手を叩くリズムは、日本語が持っていないリズムで、日本人はしばこのリズムを演奏出来ません。#オフビートで思考する語学

Palmas por Siguiriya - Alberto Garcia en Alexandre Tharaud https://t.co/dWHEhDa3rB pic.twitter.com/0smzAPa6Lo

— 岡敦/Ats🇯🇵 (@ats4u) September 29, 2023

しかしモーラ拍リズム(日本語)には2拍以上を連続して演奏するという習慣自体を持っていません。モーラ拍リズムの拍は常に孤立しています。

日本のリズムには1拍しかない。強拍弱拍が成立する為には2拍必要だが日本語は1拍しか持たないので強拍弱拍という概念自体が存在しない ── 日本文化には動きのない美しさ…雅楽の笙(しょう)の様に無限に続く様な世界観がある。#オフビートで思考する語学 pic.twitter.com/wJklGwmWN3

— 岡敦/Ats🇯🇵 (@ats4u) July 23, 2025

日本の相撲の土俵入りなどを見るとわかるように、日本のリズムは等間隔に連続しておらず、しばしば孤立しています。これはモーラ拍リズムの発音構造から来ていると考えられます。二重子音末子音を持たず、可能な限り1シラブル(1モーラ)1頭子音に分割して、それぞれを単独の拍として発音しようとするモーラ拍リズムは、それぞれの拍が孤立しています。 強拍弱拍という分割の概念ではなく、飽くまでもそれぞれが孤立しており、前拍に追従していくリズムです。

ストレス拍リズム・シラブル拍リズムの音楽に現れる、強拍と弱拍の様に分割が前提となっているリズムをここでは、分裂拍(Schizorhythmos) と呼びます。またモーラ拍リズムの分割されず孤立している拍のことをここでは 孤立拍(Solirhythmos) と呼びます。

日本的追従律動タテノリについて

受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズム(Reactive Appndism) は、言語だけでなく音楽にも影響を与えていることを見てきました。受動的事後追従付け足し主義RD=リアクティヴ・アペンディズムは、音楽だけでなく、音楽を含めた日本人の全ての習慣に深い影響を与えています。これが 日本的追従律動タテノリ です。

例えば、終わらない残業などがこれに当たります。始まる時間はとても正確なのに終わる時間は全く正確ではないことは日本人の悪しき習慣と言われて久しいですが直る気配も直す気配も全くありません。これこそが 日本的追従律動タテノリ の一例です。 コンビニで1人がレジに行くと全員レジに行ってレジが混みだす ─── これも日本的追従律動タテノリ の一例です。1人トイレに行くとみんなで一緒にトイレにいかないと気がすまない。これも日本的追従律動タテノリ です。 広い道端で、鉢合わせになった二人・・・右に避けると右に避ける、左に避けると左に避ける。何度避けてもぶつかりそうになる。日本にいると「お前が見ていないからだ!」と責任転嫁することも可能ですが、海外の人混みでこの挙動は極度に目立ちます。これも日本的追従律動タテノリ の典型的な例です。他にもたくさんの例があります。 日本人の全ての挙動を日本的追従律動タテノリ が支配しています。 ─── このことについては、稿を改めて 日本語が人間の動作の認識に与える影響の仮説 にて詳細に議論します。

ここでは 日本的追従律動タテノリ が音楽のリズムに対して与えている大きな影響について次節以降で見ていきます。そしてこれが日本人の英語音痴の本質に横たわっていることを見ていきます。

目次

  • 超グルーヴハイパーグルーヴ理論
    • はじめに
    • グルーヴ四原則とは
    • 何故日本人は縦乗りなのか
    • 強拍が先か弱拍が先かリズモクロニック・アナリシス
    • 音韻学的音楽分析フォノリズマトロジー
    • 日本人モーラ拍リズム言語話者への手紙
    • 分裂拍シゾリスモスと孤立拍ソリリスモス
    • 韻律ミータとは
    • 多層弱拍基軸律動Multi-Layered Weak-Beat Precedence
    • 多次元ディヴィジョン空間
    • 発音よりもリズムの正確さ
    • 世界は3⁻ⁿ拍子で出来ている
    • 3⁻ⁿグルーヴと2⁻ⁿグルーヴ
    • 分散グルーヴ理論
    • 弱拍天動説と強拍地動説
    • オフビートカウント入門
    • リズム認識型とリズム感
    • オフビートカウントで英語リスニングを極める
    • 日本人モーラ拍リズム言語話者の為のエチュード
    • 英語の正しい発音法
    • オフビートカウントの正しい発音
    • 多層弱拍先行ポリリズム
    • 縦乗りのメカニズム
    • 日本語話者の認識偏り
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